二度目の
「今夜、あんたを抱く」
朝、いつも通り見送ろうとすると、こっちに来いと手招きをされた。傍によって何かと思えば耳元に口を寄せてきて吐き出された言葉がこれだ。
「は?」
思わず文和を睨む。この人は朝から何を言ってるの?
その反応が期待通りだったのか、文和はいつものようにあははぁと笑う。
「そのつもりでいてくれ」
そういうと、私の反論も聞かずにさっさと家を出ていった。
そのつもりって……。
再契約から年が明け、去年と同じように新年の祝いで慌ただしく日々がすぎ、やっと落ち着いた頃だった。
前々から文和がふざけたように夜の誘いをしてくることはあった。でも、それは断られることを分かってやっているようなやりとりで、からかいのひとつだったと思う。それがあんな風にもう決まっていることのように言うなんて……。いつもと違うやりとりが、頭の中で勝手に予想を組み立てる。
結局その日一日、その事が頭にちらついて離れなかった。生娘じゃあるまいし、自分でも馬鹿だとは思う。したくないなら断ればいい。でも、今日は……そう簡単に言える気がしなかった。
夕刻になり、文和が帰宅した。玄関で出迎え、一日の報告をしながら部屋までついて行く。いつも通りの流れに、朝の発言などなかったかのようで少し拍子抜けしそうになる。やっぱりただの冗談だった?そう思いながら下がろうとした時、文和がにやりと口の端を歪める。
「朝の事、覚えているか?」
その言葉に胸が跳ねた。頬がかっと熱くなるのがわかる。自分のそのわかりやすい反応を見せたくなくて、顔を横に背ける。
「……覚えてるみたいだな」
何も返さない私を見て、自分の策が上手くいってることを悟ったのだろう。声の機嫌が明らかによくなった。
「だったら、なんなんです?」
「いや、覚えてくれていればいい」
敢えて"何を"とは言わない、その言い方がいやらしい。
「……食事の後、ここにくるから」
"何を"とは私も言わない。それだけ言い残して文和の反応も見ずに踵を返す。これでもう引けない。背中に刺さる視線を感じながら、この後のことを思い、手を握りしめた。
暗い廊下の黒い大きな扉の前に立つ。湯浴みをし、新しい夜着に着替えた。髪は飾らなくとも軽く結い上げ、目尻に朱、唇にも紅を差した。別に、この日を待ち望んでた訳じゃない。でも、誰に見せるでもない格好で来るほど、文和のことを嫌ってる訳でもない。それでも少しやりすぎたかな、そう思った瞬間、ぎぃっと扉が開いた。
「いつまでそこにいるんだ」
部屋の中の灯りが漏れ、文和の顔を照らしている。
「今、開けようとしていたんだけど」
「ふぅん、まあ入りなよ。外は冷えるだろう」
招かれるままに部屋にはいる。部屋の中は暖かく、少しだけ身体が緩んだ気がした。後ろで扉を閉めた文和が私を追い越し、牀に座る。私の方を見ると、隣をぽんぽんと叩き、ここに座れと示してくる。
こうなったらどうにでもなれと、諦めとヤケクソのような気持ちで1歩ずつ近付く。文和の隣に腰を下ろしても、何となく気まずくて文和と反対のほうに体を向ける。置くところの無い気持ちを誤魔化すように膝の上に置いた手が服を握ると、その上に文和の手が重なる。急な接触に思わず腕がびくりと震える。そんな分かりやすい反応を誤魔化したくて、重なった手を振り切って顔を隠す。
「初心な反応をするじゃないか」
「……そういうほうが好みでしょ?」
売り言葉に買い言葉でいつもみたいに返しても、きっとその意味は無い。
「嫌いじゃないが……演技じゃつまらんな」
顔を隠している手首をそっと掴まれ、ゆっくりと文和の方へ引き寄せられる。それでも、そっちに顔を向けることができない。
「初めてという訳でもないだろうに、何をそんなに恥ずかしがっているんだ」
面白がっているのか文和の声に笑いが滲んでいる。確かに、生娘ではない。でも。
「……初めて、かもしれない」
その言葉に文和の動きが止まる。何を言っているんだ、と思っているだろう。自分でもそう思う。なんて言葉を零してしまったんだろう。
「好きな人と……するのは」
吐き出しておきながら、本当になんて恥ずかしいことを言っているんだろうと後悔する。それでも、こんな気持ちになるのは、きっと文和せい。
束の間、沈黙のあと文和が堪えきれないように笑いだした。
「あっははぁ、なるほどなるほど。それでさっきから殊勝にもしおらしいわけだ」
「べつに……。だから何ってわけじゃないんだけど」
文和の反応に、より一層後悔がつのる。言うんじゃなかった。恥ずかしさで舌打ちしそうになる。
「安心しな、俺は"初めて"の女に無理をさせるほど人でなしじゃない」
「だから……んっ」
反論しようと顔を向けると、唇を塞がれる。ただ一瞬、触れるだけ。それなのに。
「あの時とは違う、だろ?」
細められた目は穏やかで、ただ貪るつもりはないと言っている。おもむろに文和の手が私の頬に触れる。暖かい指が優しく頬を包み、撫でる。
「任せてくれるな?」
無言のままで、静かに目を瞑った。
初めは優しく触れ合うだけ。そのうち文和の薄い唇が私の唇を挟み、感触を楽しむように押し当てる。やがてぬるりと口の端から舌が入り込む。
生暖かいと言うには熱く、火傷するにはぬるいそれは私の舌をなぞるように絡みつく。
「んっ……」
舌の裏側にまで入り込まれ根元を探られたとき、そのぞわぞわとした感覚に思わず息が漏れる。浮いた舌の裏側を滑りぐるりとなぞると、またそろそろと様子を伺うように奥に入り込む。息が苦しくなりながらも、ただ蹂躙するのではなくこちらの反応を確かめながらの動きだとわかった。根元を先端で押されるとぎゅっと身体に力が入る。文和の髭が擦れるくすぐったさと相まって身体を逸らして逃げようとするのに、頬に当てられた手がそれを許してはくれなかった。
舌と舌が重なり擦れ合う。絡みつき引き出され、その感触が染み込まされた後、やっと離れた時には息が上がっていた。
「髭、気持ち悪い」
わずかにでも反応してしまったことが恥ずかしくて、不満を漏らすふりをして誤魔化してしまう。
「そうか?」
口髭を触りながら大袈裟に困ったなという表情をする。
「そのうちクセになるさ」
そう言ってまた口を塞いでくる。口内をまさぐりながら、手首を掴んでいた手がゆっくりと背中に回され、後ろに倒される。
唇が離れると、文和の顔がその影の中に浮かぶ。昔だったら怒りと蔑みで不快でしか無かったのに、今はそれとは違う鼓動がする。
頬を温めていた指が首筋を通り、肩から服の中に入り込む。鎖骨を撫で、ゆっくりと襟をわずかに開き、胸元へと近づく。
「おっと、余裕のない男は好かれないんだったか」
そういうと、胸元から手を引き出し目の前で手を広げた。
「確かに、あんたとこうしていることをもっと楽しんだ方がいいのかもな」
そう言ってにやりと笑うと、腰に手をまわしおしりの辺りまでを撫で下ろす。ここにきてそうやって焦らすつもり?
「意地の悪い人も好かれないけどね」
そういうつもりなら、私はここでやめてくれてもかまわないんですけどね。文和のいやらしく這いずり回る手を避けるように体をねじり、背中を向ける。
「そうか、じゃあ優しい俺はあんたの望むことをしてやらんとな」
そういうと私の背中にぴったりと体を寄せてくる。耳に文和の吐息がかかる。脇の下からそろそろと手が差し込まれ、服の上から胸を触り始める。胸全体を掌で包み込み、布越しに触れるか触れないか、そんな触り方を続ける。僅かな刺激がより感覚を鋭くさせて、焦ったさを覚えてしまう。自然に呼吸が浅くなって、段々と先端が固くなるのを感じる。文和の手のひらがそこを擦った時、はっと息が漏れる。
「痛くないな?」
そんなことわかっているくせに。
下から胸を持ち上げると固くなったそこに親指を掛け、すうっと優しく撫で始める。それまでのじわじわと燻る淡いものと違い、痺れるような刺激が一気に身体に駆ける。
「んんっ……」
声が漏れ出そうになるのを、慌てて指で抑えて我慢する。
そのうち片手だった手が両手に増える。服の上から触っていたのが、いつの間にか服の中に侵入している。両方の手で指で直接触られれば、反応したくなくてもしてしまう。仕事の時は、どんな触られ方をしても気持ち悪いとしか思わなかったのに、今はそうじゃない。嫌なのに、嫌じゃない。ちりちりの焦がすような感覚から逃げようと背中を丸めると、文和の胸にあたる。どんどん逃げ場のない方へ追い立てられている。背中の熱と耳にかかる吐息が文和の存在を伝えてくる。
滑るように触れていた文和の指が、軽く先端を弾いた。その強い衝撃に思わず身体が強ばり、全身に快感が走る。なんとか声を我慢することできたけど、胸は反り、思わず文和の手首を掴んでしまった。こんな簡単にイってしまうなんて。
はぁはぁと乱れた息を正そうとすると、首筋を吸われる。ちゅっちゅっと熱い感覚がくすぐったくて避けようとしても、避けられるどころか首元から耳へと上がってくる。
「気持ちいいだろう?」
耳元でそっと囁かれるその言葉に、自分の乱れ具合を意識させられる。胸元は開かれ何も隠されていない。ただ文和の指がそこに絡みついているのが見える。その指がそろりと動きだす。硬く敏感になっているそこに触れるのが見えると、自分が文和にどうされているのかがわかる。
「……やっ……」
見えたことで恥ずかしさが勝ってくる。文和の指がそこをくにくにと弄る。気持ちよさと、それ以上に恥ずかしさが込み上げる。今何をしているのか何をされているのか。頭が考えるのを拒否すると、胸の気持ちよさが容赦なく襲いかかってくる。耐えきれずにまたイキそうになるのを、文和の手を掴んで止めようとする。だけど、力で勝てるはずもなく、動きは止められない。溺れるように息が苦しくなると、またその手で絶頂に導かれてしまった。
硬直がとけ、ぐったりと身体を沈ませる。全身が汗ばみ、服がしっとりと肌に張り付いている。文和の手がおもむろに動き出し、胸から更に下へと降りていく。その手が裾を捲ると、すっと寒気が脚へ降りかかる。へその下を撫で、そのまま太ももの外側まで伸びる。冷たい空気が肌を冷やす中、熱い文和の手の場所がよくわかる。そのうちももの内側へと忍び込もうとしてくる。そんなすぐにそこを触られてはたまらない。ぐっと閉じて開かれないように抵抗する。
「どうした、今更やめるなんて言わないだろ?」
「そんなこと言わないけど……」
そう言われても脚を開く気にはなれない。文和の手は相変わらずももを撫でている。ゆっくりと上下になぞるそれは、固まった身体を解すようだった。二、三度呼吸して、少しだけ気持ちを落ち着かせる。……ここまで来たのだから、と覚悟を決めると文和の方に身体を預けて、閉じていた脚の力を弱める。
「いい子だ」
子供をあやすような言い方に、恥ずかしさが込み上げる。指が太腿の隙間に入り込む。下からじりじりとせり上がり、その瞬間を否が応でも感じさせようとしている。あと、少しで……。その迫り来る予感に吐息が漏れた時、ぴちゃっと音がした。ほんの少し指先が触れただけなのに、そこからじわっと快感が広がる。動かないのに、当たってるだけなのに、切なくなってしまう。きゅっと指に力がはいる。無言の文和が気になって後ろを振り返ろうとした時、指がぬるりと動かされ、敏感なところを擦り抜かれた。急な刺激に身体が思わず震える。ぐっとそれに耐えると、文和が手を目の前に持ってくる。
「見てみなよ」
中指と親指を広げると、透明な液体が糸を引いている。思わず顔を背ける。
「ちゃんと気持ちよくなってるみたいだな」
「……そういうこと、いちいち言わなくていいから」
「いやいや、大事な事だからな。ちゃんと確認しないと」
そう言いながら、見せつけるように何度も指を閉じたり開いたりしている。その時、ふと何かを思いついたらしい。
「あんたは俺に長生きして欲しいよな?」
そう言いながら文和が体を起こした。その急な問いかけに嫌な予感がする。足元の方に移動すると私の膝を撫でながら、にやにやとこっちを見ている。
「前にどこかで聞いたんだが……。女のここから出るものをな、男が飲むと、寿命が延びるらしい」
閉じた膝を文和の両手が掴む。開こうとぐっと力をかけてくる。今更男の前で脚を開くぐらいなんて事ないのに、文和に見られると思うと何故か開くことができない。開かない脚に気づいた文和が力を緩める。
「まさか、俺の寿命が延びることに協力しない、なんてことはないよな?」
本当に……この人は嫌と言わせないようなずるい聞き方をする。でも、簡単に素直に従うのも癪で、顔を背けて腕で隠す。開かない脚を文和がゆっくりと撫でる。太ももからふくらはぎ、指先まで。そしてその指が膝に戻り、押されるままに脚が開かれる。
「これは……舐めがいがありそうだな」
その言葉が"そこ"を見ているのだと、教えてくれる。吐息がふっとかかるだけで、その近さがわかる。想像すると思わず脚を閉じてしまいたくなる。でも、文和相手にそんな、負けを認めるようなことをしたくない。
「では、ありがたく頂くとするか」
熱くて湿っぽいものがそこにぴったりとあてがわれる。下から上へ掬い上げるように"それ"が動く。動く度にぴちゃぴちゃと耳を塞ぎたくなる音が部屋に響いた。それだけでもいたたまれなくなると言うのに、時たま、わざとらしくじゅるりと吸い上げる。気持ちいいとも悪いとも言えない、恥ずかしさだけが煽られる時間に、唇を噛み締め耐える。
早く終わって欲しいと思っていた時、ぞわりと何かがそこを通った。舐められている場所の上。一番敏感なところ。そこを、指でもない舌でもない、それらとは全然違うなにかが当たる。
文和の舌が長寿の秘薬を舐めとる度に、ぞわりぞわりとそれが擦れる。その、少し痛いようなむず痒いような感覚に、思わず腰が引ける。
「こら、逃げるんじゃないよ」
太腿から腰に腕を絡ませるとぐっと引き寄せられる。がっちりと脚を固められ、もうそれから逃れることができない。ぬるぬるとそこを舐め回したと思えば、たまに差し込んでは掻き出すように動かす。それとは別にちりちりとした刺激が先端に触れる度に、呼吸が乱れる。一体何をされているの?
少しだけ首を起こす。何が触れているのか確かめたい。恐る恐る向けた視線の先では、文和が赤くて長い舌を伸ばし、ぴちゃりとそこを舐めている。その動きはやけに丁寧でそれが逆にいやらしい。その時またあの感覚が走る。髭だ。文和が舐める度に髭がちょうどそこに触れている。その瞬間を見て、襲われるあの感覚と共に腰が跳ねる。その動きで舐めていた文和の動きが止まり、こちらを見る。視線がぶつかった瞬間、身体中がかっと燃えるように熱くなった。
視線を外せないまま、敷布をぎゅっと握る。上目遣いにこちらを見ている文和がにやりと笑った。ゆっくりとその長い舌を伸ばし、先ほどまでヒゲが触れていた場所に近づける。触れるか触れないか。あんたのここを今から舐めるのだと、見せつけるように。気づけば息が浅くなり、心臓の鼓動が痛くなるほどに早くなっている。それでも目は離せなくて、その時が来るのを待つことしかできない。
そんな私の様子が望み通りで楽しいのだろう。文和の目が一層細くなり、口の端が上がる。赤い先端がそこにツンと触れた瞬間、身体が震えた。
「んっ……」
ビリビリとした衝撃が全身に広がり、思わず目を瞑る。触れた部分が熱くなり、脚が引き攣る。その反応が気に入ったのか、ツン、ツンと何度も軽くつついてくる。
「ふっ……んっ…………はぁ……あっ……」
その度に息が我慢できずに漏れだし、ビクビクと反応してしまう。掴まれた腰は逃げることもできずに乱される。
熱がどんどんと上がり始める。チカチカと目の前が光るような刺激に腰が浮きそうになった時、ぞろりとしたものがそこを這った。急な感覚に目を開けば、文和に食べられていた。足の間にその顔を埋めている。その光景が恥ずかしくてたまらないのに、目を離せないでいる。その唇が動く度に、息が荒くなる。一番敏感なところを吸い上げ押し潰し、舐め転がされる。本当に食べられて溶かされているんじゃないかと思うぐらい、そこが熱い。
「……やっ……だめっ」
思わず口から静止する言葉が漏れる。それを聞いた文和がにやりと笑うのを見た瞬間、全身に熱が爆ぜ、もう耐えることができなかった。
荒い息のまま、弛緩して重くなった身体を横たえる。嫌とは言えないけれど、こんな調子でされたんじゃ、終わる頃にはどうなってしまうの。そんな不安が頭をよぎった時、またさっきまでと違う感覚が下半身を襲う。
さっきまで触れていたものより硬い。ゆっくりと優しく入口をなぞる。乱暴に私を征服するためじゃない、もっと私の反応を楽しみたい。そんな、気遣いのようで意地の悪いやり方。数度行き来した後、指がそこを開いて侵入してくる。
さっきの余韻がまだ残る体に、その刺激は強すぎる。探るように撫で回しながら内側を押し上げる。時たまくちゅっと音がなる。激しくはない、でも逃す気などなく確実にそこに追いやろうとしている。とうとうそこに指がたどり着いた時、耐えきれず体が跳ねる。
「ここだな」
隠すことの出来ない反応を文和が拾い上げる。
「ここまで来たんだ。もう我慢することもないだろ」
「我慢なんて……してな……んっ」
全てを剥がそうと、文和の指が執拗にそこを責める。その波に飲まれないように手首を噛み、手で目を隠す。もう逃げられないのは分かってるのに、どうしても心が嫌がる。それでも首を振り、腰を引いて抵抗しようとした時、ちゅっという音と共に、さっき限界へと導いた熱がまた灯される。
「やっ……それ……やだっ」
中はとんとんと一定の間隔で刺激され、外はぬるぬると扱かれ吸い上げられる。ふたつの責め手にもう何も考えられない。
「ひっ……あぁ……んっ」
いやいやと心は抗っているのに、体はもっとして欲しいみたいに腰を浮かせてしまう。
「も……う……やぁ……」
目元から涙が濡れ落ちた時、腰がビクビクと震えまた頭が真っ白に塗りつぶされた。
激しい波が引き、ぼんやりとした頭でその残滓に身を委ねていると、お腹の辺りで最後に残っていた帯をするりと解かれる。汗ばみ、火照りきった身体が顕にされる。まだはっきりとしない頭では、恥ずかしさよりも開放感が心地いい。
ぐっと腕を引っ張られる。されるがままに身体を起こすと、同じように何も身にまとっていない文和の身体が目に入る。
「見てみな」
まだ熱が引かない頭で、文和の視線を追うと、私の下腹部の上に"それ"が乗っていた。
存在を主張するようにそそり立ち、熱く脈を打っている"それ"。
「あんたのここまで入るんだな」
その言葉に、無意識にその瞬間を想像してしまう。文和の"それ"が、私を貫き奥までの全てを満たす。今更初めてでもないし、怖い訳でもない。さっきから好き勝手弄られ、いいようにされていて、嫌だと思っているのに……文和にならもっと、されてもいい。もっと……最後までして欲しい、と思ってしまう。
言えない。でも、伝えたい。
手首を掴んでいた手を解き、その指に自分の指を絡ませる。少しだけ、力を入れて手を握る。
「受け入れて……くれるな?」
その言葉に、こくりと頷いた。
宛てがわれたそれが、十分に濡れ落ちたそこを割り込んで入ってくる。熱くてかたいもの。ゆっくりと少しずつ。その様子を恥ずかしいのに見てしまう。違和感と少しの痛み。でも、それ以上に幸せな気持ちがその熱とともに込み上げる。
文和のそれが根元まで全て入り、まるで二つの身体がくっついたように重なり合った。
「痛くはないか」
「……大丈夫」
絡めた指をもう一度握る。息は荒く、浅い。泣きたくなるのに、悲しくは無い。
「動くぞ」
ゆっくりと腰が動き出し、中のものが内壁を押し上げながら擦れる。指とは全然違う”それ”。太く硬いそれが押し込まれる度に中を広げられ、引かれる度に掻き出すように擦られる。
じゅぷ……じゅぷ……と淫らな音と、お互いの乱れた呼吸だけが部屋に響く。その一突きごとに自分が壊されていくような気がする。
「んっ……くっ…………あぁ……」
我慢していても声が漏れ出す。こんなの聞かせたくないのに。
「ひぁ……んっ……やぁ……ん」
せめて快楽に溺れる顔を見られたくなくて、顔を横に向ける。これ以上声が漏れぬように口をぐっと閉じようとしたとき、
「んあっ」
奥の限界までそれが押し込まれる。じんじんと波紋のように広がる気持ちよさに声が抑えられない。飛びそうになる視界がすっと暗くなる。目の前に黒い真っ直ぐな髪がこぼれ落ち、耳元に熱い吐息が当たる。
全身に文和の体重がかかり、押しつぶされる。肌と肌が密着し、動けないように固定されると、打ち付ける速度が早くなった。
「そんなで……声を聞かされたら……。我慢出来るわけないだろうっ」
吐息混じりに文和が声を吐き出す。
「そんないやらしい声を出して」
「そんなっ……んんっ」
動きが、文和の昂りのままに激しくなる。肩を抱きしめられ身動きできないまま、奥の奥までそれをぶつけられる。
「あっ……うっ……や…ぁ……!」
あまりの激しさに声にもならないものを漏らすことしかできない。目の前がチカチカと白く明滅する。文和の首に腕を巻き付け、快感の潮流に流されそうになるのを我慢する。どうせなら、一緒がいい。
「ぶん……かっ……」
頬と頬を擦り、声にならない声で呼ぶ。
「あぁ……出すぞっ」
その言葉の終わりに、奥に熱いものが走るのを感じると文和の背中を力の限り抱きしめた。
喉が乾いて痛い。そのうちごくりと喉がなり、大きく息を吐く。抱きしめていた腕を緩めると、そのまま文和が身体を預けてくる。その重みが苦しいのに、たまらなく愛おしく思う。
その黒い髪に指を絡め、口付けをする。
「重いか?」
髪の隙間から、文和の目がこちらを伺うように覗いている。
「大丈夫」
「それなら……もう少しだけ、このままでいさせてもらおうか」
肩にかかる指が少しだけその力を強めた。
「あんたを……離したくない」
返事はしない。その代わり、もう一度撫でるようにその背中に腕を伸ばす。
私も、同じ気持ちだと。